この記事を読むと現状の受け取り方を修正して生き方が楽になる方法を学べます
登場人物:
ハル:若手の営業社員、熱血漢で真面目な性格、向上心がある女性社員。困ったことをたびたび、タクに教えを請うと称し、愚痴を言いに来る。
タク:ハルの会社の元先輩で、退社して起業した。マイペースで自由な性格。
変えられないモノに不満を抱くと人生が苦しくなる
タクは、週末にハルの相談を受けた。いつもの、カフェで待ち合わせだ。
「お待たせ、今日はどうした?」
ハルの顔色を見ると、あまりうれしい相談ではないことは、すぐに察しがついた。
「人事異動で赴任してきた人が、いわゆる働かないオジさんなんですよ。口は達者ですが、出来ないといいわけが多くて・・・」
ハルはコップの水を飲んで続ける。
「課長に相談しましたが、居る人員で問題解決しようと言うんです。でも、結局、私の仕事を増やすことになりました。これって、不公平だと思いませんか?給料だって、多分私よりずっと多いいし。あー、思い出すだけ、イライラします!」
タクは、やっぱりと思ったのか、ゆったりした口調で慰めた。
「そうだね。俺も同じように感じたことはあるな。現状の人事制度だと、今いる人を割り振る”玉突き”人事が多いからね。人事側も苦労して配置しているんだと思うよ。いわゆる、メンバーシップ型雇用だね」
「メンバーシップ型雇用ってなんですか?」
「高度成長期は、戦争で壊れた社会が復興してきたから、ものがよく売れたんだ。例えば、水道、ガス、道路など生活インフラが急ピッチでつくられてた。それらの資材を供給する業界や建築資材や輸送業なども急成長した。当然、働いている国民の給料も増えたので、いわゆる内需も増えた」
「国家としては、経済が成長しているので、オフィスや工場に学生を多量に送り込み『労働力』として育成することが、急務だったんだ。そこで、企業は労働者をどこでも働けるように総合職として採用したんだね。会社は、労働者を会社のメンバーとして雇い、定年まで雇用してきた。これが、メンバーシップ型雇用だ。国も簡単に解雇出来ないように制度化したんだ」
タクは、一旦、話を区切るように、コーヒーを飲む。
「いままでは、メンバーシップ型雇用で問題なかった。しかし、経済が成長しなくなって企業の利益が落ちてきたことや、大企業でも倒産するような業界の再編もあって、今まで通りに従業員を雇用することが難しくなりつつある」
「そうですね。得意先でも景気のいい話が無いんです・・・私もいいネタをお話したいんですがなかなか無くて、困ってます」
ハルは、宙を見上げて困ったように呟いた。
「企業によっては、必要な時に必要な人だけ雇う、ジョブ型も検討されているけど、失業率の増加もあるだろうし、制度化には時間がかかるだろうね。だから、今いる人を活用するしか、現状では仕方ないと言えるね」
「そっかー、そうですよね。単なる従業員だから、従うしかありませんね」
ハルは、肩を落して言った。相変わらず、解りやすい人間だと、タクは思った。
自分の受け取り方は変えることができる
「しかし、ハルの受け取り方は変えることができるよ。それによって働きやすくなると思うんだ」
「受け取り方ですか?」
ハルは首を捻る。
「ハルは、その人をどんな人だと思っているのかな?」
「がんこで、人の言うことを聞かない、ワガママおじさん、だと思っています」
ハルは思い出し怒りで、ムッとしている。
「はは、漫画に出てきそうな人だね。でもなぜ、このおじさんは『人の言うことを聞かない』のかな?」
「わかりませんけど・・・」
「ハルも時には、人の言うことを聞かない時は無いかい?」
「うわ、時々ありますね。課長に怒られちゃいます」
ハルは、反省したように肩をすくめる。
「その時ハルはどうして、課長の言うことを聞かなかったのかな?」
「自分なりの強い意見があって・・・そっか、おじさんも自分の意見があって、聞かないのかも知れませんね」
「そうかも、真偽はわからないけど、正しいことはこの場合、問題ではないね。人の忠告を聞かないで失敗すれば、当人の落ち度だし、ハルは、どっちの受け止め方も選べる。だったら、自分が楽になる受け止め方を選んだ方が良いと思うけど、どうかな?」
「なるほど、そうですよね。自分の正義に基準を合わせると私が辛くなります。自分のとって不利でないなら、より相手を理解した選択がよいですね」
ガンコな人 | → | 信念を持っている人 |
人の言うことを聞かない人 | → | 自分の考えをもっている人 |
ワガママな人 | → | 自分の生き方を貫く人 |
自然と前向きになり、自分の得意なことも見えてくる
「でも、つい怒りん坊になってしまんですよね」
「練習すればいいよ。出会った人でなくても、テレビやネットの人物でもいい、今感じている受け止め方をちょっとズラシてみるといい。自分自身の受け止め方を変えることで、違った自分が見えてくると思うよ」
飽きっぽい私 | → | 色々なことに好奇心がある私 |
課長に怒られた私 | → | 課長には期待されている私 |
消極的な自分 | → | 慎重派の自分 |
「なんか、自分だと恥ずかしいですけど、どうせなら、楽しくなる受け止め方の方がおトクですね」
後日、ハルからメールが届いた。
「先輩、いつもありがとうございます。先日、ご相談した、オジさん社員への受け止め方を変えたとところ、早速効果がありました!以前は、どんよりしていた職場が明るくなりました。オジさんも、結構仕事が出来て、私も勉強になっています。タク先輩のお陰です。ありがとうございました」
タクは満足の笑みを浮かべ、コーヒーを飲んでいた。
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