この記事を読むと「怒り」の対しての対処方法が学べます
登場人物:
ハル:若手の営業社員、熱血漢で真面目な性格、向上心がある女性社員。困ったことをたびたび、タクに教えを請うと称し、愚痴を言いに来る。
タク:ハルの会社の元先輩で、退社して起業した。マイペースで自由な性格。
『怒り』は我慢しなくていい
土曜の午前のカフェ。人気は少ない。タクは、窓辺の席に座った。カフェでは、本を読む事が多い。本は、少ない投資で色々な知識を与えてくれる。読書量が思考を深める。それがタクの信念だった。
今日も時間通りに、ハルがやって来た。相変わらず、せかせかしているので店に入った瞬間、解ってしまう。タクは苦笑いでしている。
「先輩、今日もありがとうございます。先輩が居なくなってから、会社がおもしろくないですよ」ハルは、最近の会社の雰囲気を伝えてくれる。
「聞いてくださいよ。参加しているプロジェクトのリーダーの開発部の課長なんですが、言うたびに意見がコロコロ変わるんですよ。3日掛けた会議資料が、何の会話もなく真っ赤に赤ペン入れられて、ほぼ作り直しでした。最初は、怒っていましたが、もう、やる気無くなりました・・・」
「それは災難だったね。俺も経験あるけど、一方的に自分の意見を押し通す人は居るからね。もちろん、ハルはしないだろうけど、そんな時、怒鳴っても問題は悪くなるだけだね」
「そうなんです。だから、できるだけ怒らないようにしようと思っています。でも、思い出すとイライラしちゃいます」
「一番良いのは、ハル自身でハルをプロジェクトから外してもらうように申し出るのがいい」
「私、でもプロジェクトがやりたいんです・・・」
「ハルはそう答えると思ったよ。多くの人は、現状の範囲内での解決を考えるが、範囲外にある、例えば『辞める』という選択肢が抜け落ちている場合も多いからね。だから、聞いてみんだんだ。自分の意思で選択しているハルは偉いと思うよ」
「さすが、先輩、会社を退職してるから説得力ありますね」
ハルは、満更でもない様子だ。
「でも、怒らないように我慢することはよくないよ。心には、コンピューターのように、メモリがあって、深い怒りは消去されずメモリを食いつぶすんだ。消えない理由は、前に話したように、記憶はイメージが強いほど深く刻まれる。怒りという体験がエピソード記憶となり、より深く記憶に刻まれる。そのうち、メモリオーバーになって、爆発する。よくあることだね」
「私も怒らないことは良くないと思いました。でも、怒りを忘れたいけど、何度も思い出しちゃいます。どうすればいいですか?」
「まず、過去は変えられない事に気付こう。そして、この間教えた通り、受け取り方を変えよう。解決策にならないかもしれないけれど、心は軽くなると思うよ」
「そうでしたね!変えられない過去と戦っても得るものはないですよね。「リーダーの意見が時々変わってしまうこと」の受け取り方は、リーダーは身勝手で他人を振り回す人ではなくて、リーダーは自分の信念に基づきその場の状況に合わせて意見を修正できる柔軟な人と解釈することもできます」
身勝手で他人を振り回す人 | → | 自分の信念に基づきその場の状況に合わせて意見を修正できる柔軟な人 |
「そうだね。そうとも取れる。どちらの受け取り方も選べるんだ」
「怒らないことのデメリットはもう一つある。『この人は怒らない人』だというレッテルが貼られて、何度も攻撃する人もいるよ。彼らには、悪意がなく本人も無意識の場合もある。だから、怒って気付かせてあげる方が良いんだ。でも怒り方を間違えると、ハルが悪者になる場合もあるから、『怒り方』には気をつけた方がいい。上手な『怒り』方を身に着けよう。その方が人生が楽になる選択肢が増えると思うんだ」
『怒り』を収める
「まず、怒った瞬間に怒りを収める方法が必要だね。ただ、怒っただけだと、ハルの周囲への印象が悪くなることもあるからね」
「そうですね。できれば、感じ悪い人にはなりなくないです」
「怒ったと感じたら、深呼吸しよう。数秒経てば、怒りが薄れていくという学説もあるね。怒ったこととは全く別もの、自分の好きなものを考えよう。脳はマルチタスクが苦手だからね、意識を逸らすんだ。そのため、事前に好きなもののイメージを用意しておくといいね」
- 深呼吸する
- 好きなものを思い浮かべる
「わたしだったら、フルーツ一杯のパフェだなぁ」
ハルが微笑む。
『怒り』に気付く
「『怒り』に気付くことは大切だね」
「でも、瞬間的に怒るので、怒ったその時は気付け無いですよね・・・」
ハルは困ったようにうつむく。
「寝る前の3行日誌は付けているかな?怒った時ではなくても、3行日誌に書けばいい。『今日、リーダーに添削されたことを怒ったけれど、寝る前に怒りに気付くことができた!』などと、ポジティブに書いておくんだ」
「それなら、私にだって、できますね!」
ハルは、希望が持てたようだ。
『怒り』を理解し、解釈を増やす
「怒りの原因を理解しよう。よくあるのが『〜べき』と自分のルールに当てはめて判断している場合も多い」
「ありますね。添削する前には、当然、人の意見を聞くべきだと感じました」
「『〜べき』も事実の受け止め方でかわるものだね。これも、練習するといいと思う」
『怒り』を相手に伝える
「怒ったことを伝えないと、この人には怒っていいと思われるので、相手に伝えよう。伝え方を誤ると、ハルの立場が悪くなるから、上手く立ち回ろう。話してみると傷つける意図が有ったわけではなく、その人の日常の振る舞いの延長線上での行為の場合も多いと思うよ。そうでなければ、管理職にはなっていないだろうね。伝える場合の注意点は4つあるね。怒りを相手に伝える目的は、相互理解だ」
①『その場で言う』
「まず、『その場で言う』ことだ、すぐに人は忘れてしまうからね。後からだと、言った言わないの水掛け論になりがちだ」
②『私を主語する』
「『私を主語する』会話も大切だ。あなたは、説明しなかった。私は説明して欲しかった。あなたを主語にすると責めれて感じになるが、私だと責めらている感じはしないよね」
どちらが受け入れやすいか?
- あなたは、説明しなかった。
- 私は説明して欲しかった。
③『曖昧な表現は避ける』
「もっと、できるだけ、たくさん、など曖昧な表現は、人によって解釈が違うため、相互理解が難しいね」
よく使われる曖昧な言葉
- もっと
- できるだけ
- たくさん
- なるべく
④『なぜ、どうしては使わない』
「『なぜ』や『どうして』という言葉を使うと、責める意図は無くても責めらている感じがするよね」
責められていると感じる表現
- なぜ、説明しなかったのですか?
- どうして、早く処理しなかったのですか?
「先輩、ありがとうございます。すぐにできる自信はありませんが、できることから試してみます」
「そうだね、直ぐにできる必要はないと思うよ。気付いた時にすぐやることはが大切だね」
翌週、ハルからのメールが来た。ハートマークで結果がすぐに解る。
「先輩、プロジェクトリーダーと打ち解けました。先輩がおっしゃった通り、仕事にプライドがとても高い『職人』のような人でした。だから、誤解を受けることも多いんだって、笑っていました。また、新しい視点ができて、人生が楽になった気がします。また、教えてください。よろしくお願いします」
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